外に出なければ刺激的なことは少ないもので、ほとんど自宅と事務所を往復するだけの毎日を送っている私には、なかなかブログのネタがやってこない。昨日、久しぶりに永田町で会議があり、そこから帰ってくるときに刺激的なことがあった。
午前中で会議が終わり、新宿で京王線に乗って電車が発車するのを待ったいた。すると、斜め前に座っていた女の子(18歳くらいかな)が、急に私の隣に座ってきて、「これは快速ですか?」と聞いてきた。顔はハーフのように少し欧米人がかった感じで、なかなかの美人である。服装も、センスを感じさせる組み合わせで、しっかりまとめている。私は、「そうですよ」と普通に答えた。すると彼女は「何処行きですか?」と聞いてきた。何処行きかまでは確認していなかったので、「わかりません」と言うと彼女は無反応である。気でも悪くしたのかな・・・と思いつつ、「どちらまで行かれるのですか?」と尋ねると、行き先が私と同じだったので、「それならこの電車で大丈夫です」と答えた。
何となく反応の仕方が変なので、難聴ぎみなのかな・・・・と思いつつ、そのままi-Pod touchでも取り出すかなと思っていたところ、彼女は私におもむろにバックの中を見せてきた。そこにはタバコ(マルボロ)が入っており、「先ほど、2本タバコを吸ったんです。そしたら、胸が痛むんです。私は肺癌でしょうか?」といきなり聞いてきた。突然の展開にかなり驚愕したが、「肺癌ではないと思いますよ」と言うと、「なぜですか?」と聞いてくる。「初期の癌は痛みを伴わないことが多いからです。ただ、気になるようなら、一度、病院で検査してみてはいかがでしょうか?」と言うと、再び「なぜですか?」と聞いてくる。そこで、これは完全に心の病にいっちゃってるな・・・・と思ったが、席を変えるわけにも行かず、そのまま彼女の隣に座っていた。
そこから、彼女の色々なお話しが始まる。携帯電話の写真を私に見せ、「私の友達です」と言う。そこには、沢山の友達と楽しいそうにしている何枚もの写真があった。「楽しそうですね」と言うと、また「なぜですか?」と聞かれる。あちゃちゃ・・・。ことあるごとに「なぜ?」と聞いてくる3歳児と話しているようである。デブ猫の写真を見せられ、「太ってますね」というとやはり「なぜですか?」と聞かれる。仕方なく「腹が出てるから」と答えたら、再度「なぜですか?」と聞かれる。
この辺まではまだよかったのだが、彼女が「夜、眠れないのです」と言う。医師に相談して、「癖にならない程度の強さの入眠剤を処方してもらうといいですよ」と答え、また「なぜですか?」攻撃かな・・・・と思っていると「私の両親は眠れないことがないのです。いつも一緒に寝ているからです」と言う。「両親の仲がいいのはいいことではないですか」と言うと、また「なぜですか?」。この「私の両親は眠れないことがないのです。いつも一緒に寝ているからです」の台詞も5分おきくらいに連発するようになった。「両親が一緒に寝ると嫌なの?」と聞くと、「そんなことはありません」と言う。そして、彼女は「私、電車に飛び込みたいのです」と言う。ぐぐぐ・・・・遂にやばい台詞が発せられてしまった。自殺願望がある精神障がい者を扱うには、かなり言葉を選んで話さなければならない。とにかく、「頑張れ」と言って励ますのはタブーと言われている。そこから、私の頭の集積回路を最大限に働かせて会話をすることに・・・。「電車にぶつかりたいのです」と何度も言ってくる。なぜ電車にぶつかりたいか、なぜ死にたいと思うのかを聞くと、話が面倒になる可能性もあったので、私は「電車にぶつかると痛いですよ」と言った。例のごとく、「なぜですか?」と聞いてきたので、「私はサッカーをやっていて、サッカーボールが顔にぶつかったら、とても痛かったんです。サッカーボールよりもっと大きな電車がぶつかったら、それはとてつもなく痛いと思います」と言うと、彼女は黙ってしまった。我ながら名言かな・・・と思いつつ、しばらく彼女の堂々巡りの話にずっと付き合った。
彼女と話をするのはいいのだが、電車の周りの客は私と彼女が赤の他人であることを知っているわけで、皆耳がダンボになっていた。とにかく、私は恥ずかしくて仕方がなかった。彼女が京王線の車掌さんと付き合ってるエピソードを話してくれて、「毎週のようにエッチしてます。でも、私はゴムを使うのが嫌いなんです。」と言ったとき、私は顔から火が噴き出しそうであった。皆、私の反応を見ていたに違いない。私は一言小さな声で「俺も」とだけ答えた。
彼女の話の多くは妄想から来ているものであろう。そして、何度も何度も同じ話を繰り返し、こちらが真面目に答えると、全て「なぜですか?」と聞いてくる。精神科の看護師は、毎日、このような患者さん、いや、この患者さんはかなり軽症な方だと思うが、そんな方々を相手にしているわけである。本当に大変な仕事である。
ただ、何となくこちらもピュアな気持ちになった。そして、久々に頭の集積回路をフル稼動させて会話をした。
目的の駅について、一緒にホームに降り立ったが、そこから彼女は私を完全に無視しており、「有り難うございました」の一言も、「さようなら」の一言もなかった。まあ、彼女が電車に飛び込まなければそれでいいわけだが・・・。彼女が電車に飛び込まず、階段を下りていく姿を確認し、私も階段を下りた。
すごく、忙しいのに、ぐったりと疲れた私は、その後、ほとんど仕事ができなかった。思わず自問自答。「なぜですか?」